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東京地方裁判所 平成元年(ワ)17388号 判決

原告

福島秋男

ほか一名

被告

有限会社加藤運送

ほか一名

主文

一  被告有限会社加藤運送は、原告福島秋男に対し、二五七万四五七五円及び内金二四二万四五七五円に対する昭和六三年一二月一四日から、内金一五万円に対する平成二年一月一九日から各支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告有限会社加藤運送は、原告福島千代子に対し、二四七万四五七五円及び内金二三二万四五七五円に対する昭和六三年一二月一四日から、内金一五万円に対する平成二年一月一九日から各支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らの、被告有限会社加藤運送に対するその余の請求及び被告三枝修に対する請求を、いずれも棄却する。

四  訴訟費用は一〇分し、その九を原告らの負担とし、その余を被告有限会社加藤運送の負担とする。

五  この判決第一項及び第二項は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告福島秋男に対し、各自二六七四万五七五〇円及び内金二四二四万五七五〇円に対する昭和六三年一二月一四日から、内金二五〇万円に対する平成二年一月一九日から各支払い済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

2  被告らは、原告福島千代子に対し、各自二五七四万五七五〇円及び内金二三二四万五七五〇円に対する昭和六三年一二月一四日から、内金二五〇万円に対する平成二年一月一九日から各支払い済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  1項及び2項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二請求の原因

一  本件事故の発生

原告らは夫婦であるが、原告ら間の子である福島裕次郎(昭和四七年九月二三日生、本件事故当時一六歳、以下「亡裕次郎」という。)は、次の交通事故で死亡した。

1  発生日時 昭和六三年一二月一四日午後五時三〇分ころ

2  発生場所 神奈川県小田原市国府津四―二―一七先国道一号線上

3  事故状況 右日時・場所において、亡裕次郎が自動二輪車(以下「原告車両」という。)で熱海方面から平塚方面へ走行中、被告三枝修(以下「被告三枝」という。)の運転する被告有限会社加藤運送(以下「被告会社」という。)所有の大型貨物自動車(以下「被告車両」という。)が追い抜きをかけ、原告車両に接触し、同車が転倒したため、被店車両の左後輪に亡裕次郎が轢過され、頭蓋骨粉砕骨折、胸骨骨折、肋骨多発骨折等の損傷を負い、即死した。

二  責任原因

1  被告三枝は、前記日時・場所において被告車両を運転して走行していた者であるから、ハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び車両の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない注意義務があるから、原告車両を追い越すにあたつては、原告車両との間の距離を十分に取らなければならないのに、これを怠り、被告車両を原告車両に接触させた過失があるから、民法七〇九条により原告らが本件事故で被つた損害を賠償すべき責任がある。

2  被告会社は、本店所在地において一般区域貨物自動車運送事業等を営み、被告三枝は同会社の従業員である。被告三枝は、被告会社の業務に従事中に本件事故を起こしており、被告会社は、被告車両を業務用に使用し、自己のために運行の用に供していた者であるから、自賠法三条により原告らが被つた損害を賠償すべき責任がある。

三  損害

1  過失利益 三一四九万一五〇〇円

亡裕次郎は、本件事故当時一六歳の健康な男子であつたから、本件事故がなければ一八歳から六七歳までの間稼働して収入を得れるところ、これを失つたから、その逸失利益を昭和六二年度全年齢平均給与額三八二万一九〇〇円を基礎に、生活費控除率五割、ライプニツツ方式、係数一六・四七九五で現価を算定すると三一四九万一五〇〇円となる。

原告らは、亡裕次郎の父母であり、右損害賠償請求権を各二分の一相続した。

2  慰謝料 一五〇〇万円

亡裕次郎は、原告らの二男であり、本件事故により子を失つた原告らの精神的苦痛は極めて大きく、その慰謝料は各七五〇万円を下ることはない。

3  葬儀費用 一〇〇万円

原告秋男は、亡裕次郎の葬儀を営み、その諸経費を支出したが、一〇〇万円を下ることはない。

4  弁護士費用 五〇〇万円

原告らは、原告ら代理人に本件訴訟を委任し、その費用各二五〇万円を支払う旨約した。

四  よつて、請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。

第三請求の原因に対する認否

一  請求の原因一項については、被告車両が追い抜きをかけ、原告車両に接触したとする点及び轢過されたとする点は否認し、その余は認める。

二  同二項については、被告会社が本店所在地において一般区域貨物自動車運送事業等を営むこと、被告三枝が被告会社に勤務する者であることは認め、その余は争う。

三  同三項は争う。

四  同四項は争う。

第四被告らの主張

一  本件事故は、被告三枝運転の被告車両が、時速約三八キロメートルで直進進行中に、被告車両の左側を追い抜こうとした亡裕次郎運転の原告車両がバランスを崩して転倒し、亡裕次郎が被告車両の後車輪の間にとび込んだものである。

二  被告三枝は、亡裕次郎の原告車両が被告車両に転倒しかかるのを見て、直ちに急ブレーキをかけたため、亡裕次郎を轢過するには至らず、本件事故発生後、後輪の間から亡裕次郎を引き出した。

三  本件事故後の実況見分によつても、原告車両と被告車両とが接触した痕跡はなく、亡裕次郎自らの運転ミスによる転倒事故として処理され、被告三枝は不起訴処分となり、行政処分も受けていない。

四  以上、本件事故に関しては、被告らに何らの責任はない。

第五証拠

本件記録中証拠関係目録記載のとおりである。

理由

一  本件事故の発生

請求の原因一項については、本件事故の発生については、被告車両が追い抜きをかける際に原告車両に接触したとする点及び亡裕次郎が轢過されたとする点を除いて、当事者間に争いはなく、右争いのない事実と成立に争いのない甲第三号証の一ないし四、甲第四号証、甲第五号証、乙第一号証一ないし三、乙第二号証、証人山田豊の証言、被告三枝修本人尋問の結果、弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

1  本件事故現場は、熱海方面(北西)から平塚方面(南東)へ通じる国道一号線(以下「本件道路」という。)上で、路面は舗装され、歩車道の区別があり、両側に白色ペイントで外側線、道路中央には黄色ペイントで中央線が引かれている。

本件道路は、本件事故現場から約一八メートル熱海寄りにある信号機の設置されたT字路交差点(以下「本件交差点」という。)を挟んで坂となつており、熱海方面から約一〇〇分の一の上り坂、平塚方面へ約一〇〇分の三の下り坂になつている。

本件道路は、ほぼ直線であるが、熱海方面から平塚方面へ、本件交差点を過ぎると緩く左にカーブし、車道幅員が狭くなり、本件交差点の熱海寄りで九・九メートル、平塚寄りで九・五メートル、更に平塚寄りでは八・五メートルとなるが、被告三枝及び亡裕次郎の走行する車線において、その狭まりがある。

本件事故現場付近道路の両側は民家、食堂等がたち並び、街路灯が道路両側に約六〇メートルの間隔で設置されており、やや明るい状況である。

交通規制は、最高速度四〇キロメートル毎時、追い越しのための右側部分はみ出し禁止、駐車禁止終日となつている。

2  本件事故現場には、被告車両の後輪のものと認められるスリツプ痕左二条長さ一一・三メートル、右二条長さ八・一メートルが印象されているが、スリツプ痕左二条には、布摩擦痕(ひきずり痕)及び肉片らしきものの付着がある。

スリツプ痕左二条の平塚寄り先端付近の地点で、亡裕次郎は、うつ伏せの姿勢で、頭部を南側に向け、被告車両の左後輪の前後輪と後後輪との間に挟まれて死亡しており、同地点には、肉片らしきもの若干及び血液が約四〇センチメートル四方溜まり、更に同地点から外側線にかけて血液が長さ約一・五メートルに渡り流出している。

スリツプ痕左二条の熱海寄り先端付近の外側線付近の地点に、原告車両が右側を下にして転倒していて、エンジンオイルが幅約二〇センチメートル、長さ約一メートルに渡り流出し、更に同地点から熱海方面寄りの外側線上に長さ二メートルに渡りラジエーターの水が流出し、また、同地点から熱海方面寄りに原告車両のものと認められる擦過痕長さ約五・七メートルが印象され、更に、その場所から熱海方面寄りに原告車両のものと認められるスリツプ痕一条長さ約五・六メートルが印象されている。

3  被告車両は、事業用大型トレーラーで、牽引車(トラクター)は車長五・五六メートル、車幅二・四八メートル、車高二・七九メートルで、被牽引車(セミトレーラー)は車長一一・九五メートル、車幅二・四九メートル、車高三・〇メートルで、制動、灯器に異常は認められない。

被告車両の左側サイドバンパー後部下段、後輪タイヤから約一・七メートルの部分(サイドバンパー下側長さ約一・六八メートルに渡る部分)に一部泥が落ちていて、後輪左側ダブルタイヤトレツド部に肉片らしきもの及び血液の付着がある。

4  原告車両は、自動二輪車二四〇CCで、車長二・〇二メートル、車幅〇・六九メートル、車高一・一四メートルであり、制動、灯火に異常は認められない。

原告車両のラジエーターホースに破損と擦過、前部右横タンク本体の破損、エンジンカバー、右側ブレーキレバー先端、右側ミラー裏側、右側マフラー、右側ブレーキのフードカバー、右側ハンドグリツプ先端、後部右側ウインカー本体等の擦過がみられ、登録番号票の左側ねじがはずれている。

5  被告三枝は、被告会社の従業員で、その業務として、被告車両を運転し、本件道路を熱海方面から平塚方面へ向け、渋滞していたこともあつて、時速約三八キロメートルで走行中、本件交差点を通過したあたりで、大きな音を聞き、バツクミラーを見ると、左側後方約九・〇メートル付近で、原告車両のライトが見え、それが被告車両の方に倒れてくるのが見えたため、すぐに急ブレーキを踏み、車両どうしの接触はなかつたが、亡裕次郎が被告車両の方に倒れ込んだため、同人を左後輪の前後輪で轢過し、同人に頭蓋骨粉砕骨折、胸骨骨折、肋骨多発骨折の傷害を負わせ、頭蓋骨粉砕骨折による脳挫滅のため亡裕次郎を死亡させた。

6  亡裕次郎は、原告車両を運転し、本件道路を熱海方面から平塚方面へ向けて走行中、本件交差点を通過したあたりで、被告車両の後方左脇から進入し、被告車両の左側の通行余地部分を、ほぼ外側線の内側に沿つて、被告車両と併進して走行していたが、自車の前方を走行していた自転車との追突等を避けるため、速度を減じた際、自車のバランスを失つて転倒し、車両どうしが接触することはなかつたが、亡裕次郎が被告車両の方に倒れ込んだため、被告車両のセミトレーラーの左側サイドバンパー後方の下部に接触した後、被告車両の左後輪の前後輪に轢過され、前記傷害を負つて死亡した。

以上の事実が認められる。

二  責任原因

1  原告らは、被告三枝の運転する被告車両が原告車両に対して追い抜きをかけた際、原告車両に接触し、原告車両が転倒したとして、被告三枝に過失がある旨主張し、甲第四号証、乙第一号証の三には原告主張に添う部分があるが、乙第一号証の三は乙第一号証の一で訂正されているところであり、甲第四号証は乙第一号証の三に依拠して作成されたものであり、甲第四号証、乙第一号証の三の原告主張に添う部分は、乙第一号証の三、甲第三号証の三、証人山田豊の証言、被告三枝修本人尋問の結果に照らし採用できず、前記認定事実によれば、被告車両が原告車両の追い抜きをかけたことも、被告車両と原告車両とが接触したことも認められないから、原告らの右主張は採用しない。

2  原告らは、被告会社は被告車両を自己のために運行の用に供する者であるから自賠法三条の運行供用者責任がある旨主張し、被告会社が本店所在地において一般区域貨物自動車運送事業を営むこと、被告三枝が被告会社の従業員であることについては当事者間に争いはなく、前記認定事実によれば、被告三枝は被告会社の業務として被告車両を運転中に本件事故を起こしており、これらによれば原告らの右主張を認めることができる。

なお、被告会社は、亡裕次郎を轢過したことはない旨主張するが、前記認定のとおり亡裕次郎は被告車両の後輪の前後輪と後後輪との間に挟まれていたものであり、後輪左側ダブルタイヤトレツド部に肉片らしきもの及び血液の付着があり、亡裕次郎の傷害は頭蓋骨粉砕骨折、胸骨骨折、肋骨多発骨折というものであり、単に転倒しただけで右のような傷害を負うはずはなく、事故状況等からして、被告車両の左後輪の前後輪が亡裕次郎を轢過したものと認めることができるから、被告会社の右主張は採用しない。

三  したがつて、被告会社は、自賠法三条にもとづき、原告らの被つた損害を賠償すべき責任があるところ、被告会社は、被告らに何らの責任がなく、いわゆる不可抗力であるから免責となる旨主張する。

しかし、前記認定事実によれば、本件道路は、本件交差点の熱海方面から平塚方面に向けて、その車道幅員が約九・九メートル、九・五メートル、八・五メートルと狭まり、被告三枝及び亡裕次郎が走行している車線においてその狭まりがみられる。

自動車の運転者としては、一般抽象的に言えば自車の進路前方及び側方の安全を確認すべき注意義務があり、通常の場合は自車の進路前方に対しての安全を確認すれば足りると言えるが、自車の進行方向を変更するなど自車の動静を変更する場合は、側方や後方の安全を確認する必要があり、道路状況が変化し、道路幅員が狭くなるなどして、前方の路面空間が狭まることが予想される場合にも、自車の側方の通行余地部分を走行し、自車に近接している自動二輪車等が、路面空間の狭まりによる通行余地部分の狭まりや自車の動静等に影響されて転倒等し、自車に接触したり、その運転者が前輪と後輪との間に投げ出されることのあり得ることなどを予想して、自車の側方の安全を注視しなければならないものというべきであり、特に、被告三枝の運転する被告車両は、大型トレーラーで、全車長が一七・五一メートル(トラクター部五・五六、トレーラー部一一・九五メートル)あり、その側方を近接して走行する自動二輪車等に対して与える危険性は普通乗用自動車等に比較して大きいものと考えられるから、その安全を注視すべき心づかいが一層要求される。

したがつて、被告三枝は、被告車両を進行させるにあたつては、前方車道幅員が狭くなることを考慮し、サイドミラー等で被告車両の側方をみて、その安全を確認すべきところ、これをなさず、原告車両の存在に気付かなかつた。

原告車両のスリツプ痕は約五・七メートルあり、その間は亡裕次郎が転倒したとは考えられず、亡裕次郎が被告車両の左側サイドバンパー後部下段に接触したのは左後輪の前後輪から約一・七メートルの位置であり、被告三枝が倒れかかる原告車両を認めたのは左側後方約九メートルであり、亡裕次郎に異常走行が始まつてから轢過に至るまでの距離は、少なくとも七・四メートル以上はあつたものと認められるから、それからしても、被告三枝がサイドミラー等で確認していれば、被告車両の左側の通行余地部分を併進して走行している自転車及び原告車両の存在を発見し、これらが前方道路が狭まることなどで、危険が発生する虞れがあることを考慮し、あらかじめ不足の事態に対する配慮をし、原告車両や自転車の動静に注視していれば、徐行したり、制動装置を適切に操作するなどして、原告車両の異常走行と同時に、その安全を図ることができ、轢過に至ることはなかつたものとするのが相当である。

被告三枝は、被告車両が大型トレーラーで長さ約一七・五一メートルあり、このような車両を運行させる業務に従事する者であるから、その業務を遂行するに適した判断能力を要求され、被告車両の危険性の圏内の要因については、その対応を常に心がけるべきことが要求されているものであり、本件事故は、被告車両の有する危険性の圏内の要因である近接自動二輪車に発生した事故であつて、被告三枝の判断で対処できる範囲の事柄であり、同人の対処範囲を越える圏外から思いもかけず飛び込んできた要因とは異なる。また、運行供用者である被告会社は、自賠法五条によつて一定額の責任保険契約の締結が強制されているのであるから、危険責任の理念と公平の要求から、車両圏内の要因にもとづくものに対しては、その防止に必要とされる一切の注意義務をつくしても避けられなかつたときは、不可抗力として運行供用者に対して免責を認めるべきであるが、本件事故は、被告三枝の行為によつては、避け得ることができたと考えられるから、不可抗力の出来事とはいえない。

したがつて、被告会社の前記主張は採用できないから、被告会社は自賠法三条にもとづき、原告らが本件事故で被つた損害を賠償すべき責任がある。

四  損害

1  逸失利益 三一四九万一五〇〇円

成立に争いのない甲第一号証、原告福島秋男本人尋問の結果、弁論の全趣旨によれば、亡裕次郎は、本件事故当時一六歳の健康な男子であつたから、本件事故で死亡しなければ、一八歳から六七歳までの間稼働して、少なくとも年収額三八二万一九〇〇円を得れるものと認めるのが相当であるから、同人の逸失利益を右年収額三八二万一九〇〇円を基礎に、生活費控除率を五割として、ライプニツツ方式、係数一六・四七九五で現価を算定すると三一四九万一五〇〇円となる。

甲第一号証、弁論の全趣旨によれば、原告福島秋男は亡裕次郎の父で、原告福島千代子は母であり、亡裕次郎の右損害賠償請求権を法定相続分に従い、各二分の一を相続したことが認められる。

2  慰謝料 一五〇〇万円

原告らは、本件事故で亡裕次郎を失い、精神的苦痛を負つたところ、これを慰謝するには、亡裕次郎の年齢、性別、家庭環境等を考慮し、原告ら各七五〇万円が相当と認められる。

3  葬儀費 一〇〇万円

弁論の全趣旨によれば、原告秋男は、亡裕次郎の葬儀を営み、多額の費用を要したことが認められるところ、本件事故と相当因果関係のある葬儀費としては一〇〇万円が相当と認められる。

4  以上損害額合計 四七四九万一五〇〇円

原告秋男 二四二四万五七五〇円

原告千代子 二三二四万五七五〇円

五  過失相殺

前記認定事実のように、本件事故は、亡裕次郎が被告車両の左側方通行余地部分を併進して走行していた際に、転倒して被告車両の方に倒れたことが大きな原因となつているから、亡裕次郎にも過失があり、その九割を過失相殺するのが相当である。

過失相殺後損害額

原告秋男 二四二万四五七五円

原告千代子 二三二万四五七五円

六  弁護士費用 三〇万円

弁論の全趣旨によれば、原告らは、本件訴訟を原告ら代理人らに委任し、弁護士費用を支払う旨約したことが認められるところ、本件訴訟の審理の経緯、認容額等諸事情によれば、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は三〇万円(原告ら各一五万円)が相当と認められる。

七  よつて、原告秋男の被告会社に対する請求は、二五七万四五七五円及び内金二四二万四五七五円に対する本件事故日である昭和六三年一二月一四日から、内金一五万円に対する本件訴状の送達の日の翌日である平成二年一月一九日から各支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから、この限度で認容し、被告会社に対するその余の請求及び被告三枝に対する請求は理由がないから棄却することとし、原告千代子の被告会社に対する請求は、二四七万四五七五円及び内金二三二万四五七五円に対する昭和六三年一二月一四日から、内金一五万円に対する平成二年一月一九日から各支払い済みまで前同様年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから、この限度で認容し、被告会社に対するその余の請求及び被告三枝に対する請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 原田卓)

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